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ダヴィンチ(ロボット支援腹腔鏡下手術)

ロボット支援腹腔鏡下手術(ダヴィンチ手術)について

 現在、世界ではロボット技術を利用した手術が、次々と導入されています。この手術は、正式には「ロボット支援腹腔鏡下手術」と呼ばれており、身体に数か所の小さな穴を作って、そこから内視鏡やロボットアームを入れて、手術部位の3D画像を見ながらロボットアームを操作して手術を行います。医師の操作をロボットが支援することによって、より精緻な手術が可能になるとともに、手術を受ける患者さんの負担を軽減することも期待されています。この手術に使用されるロボットが、従来は米国製の「ダヴィンチ サージカルシステム」であった為に、「ダヴィンチ手術」と呼ばれることもありますが、現在他社のシステムが開発中であり、まもなくいろいろなロボットシステムが登場すると思われます。

開腹手術との違い

ロボット支援腹腔鏡下手術は、従来行われていた開腹手術と比較すると、次のような違いがあります。

① 傷口が小さい
内視鏡やロボットアームを挿入するための穴は、直径5~12mm程度ですので、皮膚を大きく切開する従来の手術と比べると、圧倒的に小さな傷ですみます。このことは、手術後の痛みが少ないばかりでなく、傷が目立ちにくい、回復が早い、感染が少ない、といったメリットもあります。
② 視野が良好
手術する部位のすぐ近くまで内視鏡が接近するため、肉眼よりも拡大された詳細な画像が確認できます。しかも3Dで遠近感もしっかり分かりますので、細かい操作をする際に役立ちます。
③ 正確な操作が可能
従来の鋏や鉗子などの手術機械や指よりずっと小さなロボットアームが手術部位近くで自由に動くため、正確な操作が可能です。しかも手振れ防止機能がついているので、操作が安定しています。

これらの特徴により、開腹手術に比べて出血量が少なく、手術後の回復も早くなり、早期退院、早期社会復帰が可能となります。

ダヴィンチ サージカルシステムの実際

 現在、旭中央病院では第3世代の「ダヴィンチXi」というシステムを使用しています。ダヴィンチシステムは次の3つの機械で構成されています。患者さんの側に設置し、内視鏡とロボットアームを装着して、実際に手術操作を行う機械をペイシェントカートといいます。
執刀医をサポートするスタッフが確認する映像を調整して表示する機械が、ビジョンカートです。
そして、患者さんから少し離れたところで、執刀医がペイシェントカートを操作する機械をサージョンコンソールといいます。
手術は、ロボットが勝手に動くのではなく、執刀医がサージョンコンソールを操作することで、各ロボットアームが作動して行われると同時に、患者さんのそばについているスタッフのサポートも必要です。手術には執刀医、助手の医師、看護師、麻酔科医師、ロボットの管理をする臨床工学士など、7,8名がチームとなって担当します。

ロボット支援手術の今後

 日本で初めてロボット手術が保険で認められたのは、2012年のロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術でした。以後、泌尿器科領域では腎、膀胱、外科領域では胃、直腸、肺、縦郭、婦人科領域では子宮と、徐々に手術可能な範囲が広がっています。旭中央病院では2013年1月に前立腺全摘除術にダヴィンチシステムを導入して以来、徐々に適応を拡大し、現在は上記全ての手術に対応しています。旭中央病院手術室にロボット支援手術検討委員会を設置し、スタッフのトレーニングや認定制度を導入して、ロボット支援手術の技術と安全性の向上に努めています。これからも普及が進むと思われる新技術を、一早く安全に提供できる体制を維持していきたいと思っています。