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院内日誌

2012年6月 医局 イタリアの精神保健システム視察に2名の医師が参加しました

6 月5 日から6 月15 日にかけて、イタリアの精神保健システムを視察する目的で、イタリアのトリエステとトレントの2 都市へ神経精神科医師が2名視察に行きました。視察団の団長はジャーナリストで、医療関係者のみならず教育関係者、学生、福祉関係者、社会学者や障がい者向けの不動産関係の仕事をしている方など、様々な角度から精神障がいに関わる人が集まりました。

さて、「なぜイタリアなのか?」ですが、一言で言うと、イタリアには精神病院がないのです。つまり単科の精神科入院施設がありません。1960 年代まではイタリアも日本と同様に精神疾患の治療は入院中心で行われていました。しかし1970 年代にバザーリアという医師が「マニコミオ(イタリア語で精神病院を意味する)」で行われている治療に疑問を持ち、「自由こそ治療だ」という考えに基づき、地域中心の精神医療に変革を行いました。その結果マニコミオを無くすということになったのです。
当然、病院を無くすというのは容易なことではなく、精神障がいのある人が地域で暮らす際に生じてくる暮らしにくさや、精神障がいに対する偏見を乗り越える工夫が必要であり、やってみないと見えてこない様々な問題があったようです。
しかし、イタリアには良い言葉があります。それはSi Puó Fare(しっぽ ふぁーれ=日本語で、"やればできるさ")という言葉です。この言葉を合言葉に色々な運動が行われてきました。その結果、たとえ重い精神障がいがあっても、芸術的・文化的な活動や仕事をして人々と交流し、自分らしく、自由と責任を持って、人との温かいつながりを持ちながら地域で暮らすことができるようになったのです。この変革は世界でも注目され、WHO では現在最も理想的な精神保健システムのモデルの一つと考えられています。
私が実際にイタリアに行って見たものは、本当に心温まるものでした。

日本でも、近年「入院」から「地域」中心の精神医療を目指すように方針転換がなされています。その一つの動きとして、ACT(Assertive Community Treatment 包括型地域生活支援プログラム)という、重症の精神障がい者が地域で生活することを支えるアメリカ生まれのチームアプローチがあり、当院でも2009 年10 月より行っています。
海匝地域には、優れた精神保健福祉システム、複数の病院、行政・福祉のスタッフがいます。グループホームの運営を含め、様々な医療・福祉サービスが展開されています。それらにより当院の精神科病棟のダウンサイジングが行われ、精神障がい者が地域で生活することが実際に可能になってきています。地域の精神保健がさらに進んでいくきっかけとなるよう今回学んできたことの報告会を9月9日に当院を会場として行います。

(神経精神科医師)

2012.08.14公開