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腹部大動脈瘤について (第13版) 2016年4月6日 開腹手術の併存疾患数と手術成績

はじめに

血管外科 古屋隆俊

はじめに:最近の1年3ヶ月間の症例 (非破裂瘤 40例、破裂瘤 12例) の成績を追加し、全国の病院との比較グラフ(入院日数、入院費用)の最新版を追加しました。また2015年1月から血管内治療(EVAR : Endovascular aneurysm repair) を開始し、1年3ヶ月で12例施行していますが、この文章はあくまで、開腹手術による腹部大動脈瘤の解説と成績が中心となっています。

当院の手術成績

1. 予定手術(1992年10月から2016年3月まで、23年6ヶ月間)

 最近約23年6ヶ月間に手術を行った非破裂の腹部大動脈瘤 (808例) の患者さんの平均年齢は73.9歳で、193例 (23.9%) は開腹手術の既往を持ち、術前合併症(危険因子。喫煙も危険因子として加えました)は平均2.8個ありました。術前合併症が多いほど手術リスクは高くなります。

緊急手術を除いた予定手術 (769例) の成績は、

  • 合併症数≧6の方は   14例、死亡1例 (死亡率 7.1%)
  • 合併症数≧5の方は   84例、死亡3例 (死亡率 3.6%)
  • 合併症数≧4の方は  230例、死亡6例 (死亡率 2.6%)
  • 合併症数≦3の方は  534例、死亡3例 (死亡率 0.56%)
  • 合併症数≦2の方は  303例、死亡1例 (死亡率 0.33%)
  • 年齢80歳以上の方は 205例、死亡2例 (死亡率 0.98%)
  • 年齢80歳未満の方は 560例、死亡7例 (死亡率 1.25%)

というように、年齢による差はありませんが、合併症の数により明らかに手術成績に差があります。

2. 緊急手術 (1992年10月から2016年3月まで、23年6ヶ月間)

 一方、同時期に破裂した腹部大動脈瘤患者は152例、切迫破裂 (破裂していない、破裂直前の状態) で緊急・準緊急に手術した患者さんは46例でした。緊急手術では全身状態の評価、禁煙指導、内服薬のチェックなどできず、患者さん側も心構えが無いまま手術と なるので、破裂の有無にかかわらず成績は不良でした。

  • 緊急手術(非破裂瘤)は  60例、死亡 4例 (死亡率 6.7%)
  • 緊急手術(破裂瘤)は  152例、死亡34例 (死亡率 22.4%)
  • 80歳未満の破裂例は   113例、死亡18例 (死亡率 15.9%)
  • 80歳以上の破裂例瘤は  39例、死亡16例 (死亡 41.0%)
  • 85歳以上の破裂例は    15例、死亡10例 (死亡率 66.7%)

 さらに、自宅や救急外来で手術もできずに亡くなる方が現実にはたくさんいらっしゃいます。合併症が多い方や高齢者ほど破裂した場合は助かる可能性がないので、破裂する前に十分準備して手術するのが一番安全で、良い結果につながります。

 また、循環器内科や脳神経外科などで、「血液さらさら」の薬が出ている患者さんは、腹部エコーやCTを行わないと、破裂したら「血が止まらなくなって死亡する危険のある」腹部大動脈瘤を見逃すことになります。ぜひ、人間ドックなどで腹部エコーを行うようにしてください。破裂する前であれば、腹部大動脈瘤は治る病気です。