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高齢者の口腔ケア(歯科・歯科口腔外科:秋葉正一)

口腔ケアとは?

口腔の疾病予防、健康の保持増進、リハビリテーション(機能回復のための訓練)により、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上を目指した科学であり技術であるといえるでしょう。

口腔ケアの一般的な方法は?

  1. 含嗽法(洗口法)
  2. 歯みがき法
  3. 口腔清拭法(スポンジブラシなど)

難しいことではなく口内の手入れ(義歯も含む)と言うことです。

そして高齢者の口腔ケアとは

「残った歯」と「義歯」と「粘膜」の管理とも言い換えられます。

口腔ケアをしないとどうなりますか?

1.局所的問題が発生(口腔の機能低下や疾病の発生・悪化)

  1. 食物が食べにくくなります。
  2. むし歯ができます(悪化します)。
  3. 歯周病(歯槽のう漏症)になります(悪化します)。
  4. 歯や歯肉に疼痛や出血がみられるようになります。
  5. 口臭が強くなります。
  6. 口腔粘膜や口唇が乾燥して切れたり出血したりします。
  7. 爽快感が欠如して気持ちが悪くなります。

2.全身に影響を与える

  1. 高齢者は嚥下反射、舌の運動、咳反射が低下していますので、就眠中に口腔や咽頭に生息する細菌が唾液とともに肺に侵入する機会が増加します。さらに異物を排除する呼吸器粘膜上皮の繊毛の活動も低下しています。これらの結果として生ずる肺炎を誤嚥性肺炎と言います。わが国では65歳以上の高齢者の死亡原因の第1位が肺炎です。要介護者に対し適切な口腔ケアを徹底的に行うことで呼吸器感染症が軽減することが証明されております。
  2. 病巣感染(口腔の病気が原因して他の部位に病気が発生もしくは悪化すること)
    細菌性心内膜炎、心血管系疾患、糖尿病など
  3. 口腔そのものに病気が発生する(ガンなど)

3.介護する視点から

  1. 口腔に障害が生じるため食事の時間が長くなります。
  2. 摂取できるよう食物の形態を変える必要に迫られ、調理に手間がかかります。
  3. 息が臭く強くなるので困ります。
  4. よく発熱するようになります。
  5. 「おいしく食べられない」ようになります。

厄介なカビの1種、カンジダについて

1.カンジダの特徴

本来カンジダ菌は非病原性です。増えると肉眼では白い豆腐のかすのようなものに見えます。
カンジダ菌は弱酸性を好みます。病原性を持って臨床症状を現すには更に他の因子が必要です。

2.カンジダ症の誘因

  • 年齢(高齢者、新生児等)
  • 局所的要因(不適当な義歯、歯の欠如、口腔粘膜病変)
  • 全身的要因(栄養状態、白血病、糖尿病、免疫不全な状態、その他)
  • 薬物的要因(抗生物質、副腎皮質ホルモン剤、抗癌剤)

3.口腔との関係

口腔内の清潔度と口腔内のカンジダとの間には相関関係があります。つまり手入れが良いとカンジダが減少し、手入れが悪いと増加します。
※義歯の手入れが悪いとカンジダも生えやすく成り、義歯の表面が普段よりヌルヌルします。

4.口腔のカンジダ症の対策

局所的
口腔の環境を整える
口腔の中を弱アルカリ性にするために、2%の重曹水で良くうがいをする。(参考:日本歯科医師会公式サイト他)
カンジダの嫌いな環境にする。
全身的
病気を克服し体力をつける。
薬物投与
抗真菌剤を服用する。

唾液の働きについて

  1. 唾液の働きのひとつに自浄作用(洗い流す作用)がありますが、唾液が減少するとその作用が弱くなります。
  2. 唾液が減少すると口腔は乾燥しヒリヒリ感(灼熱感)が出現したり、自浄作用が弱くなるので虫歯、歯槽のう漏症になり易くなります。
  3. 唾液の分泌を抑制する可能性のある薬がありますので、長期にわたり薬を服用し口腔感想感を強く感じている方は担当医に相談したり、良くうがいをして口腔内をきれいにするよう心がけて下さい。
  4. その薬は:消化器系疾患治療剤、循環器系疾患治療剤、精神科疾患治療剤、神経疾患治療剤、炎症・アレルギー治療剤、その他などです。
  5. 上記をふまえて口腔ケアは意識して行う必要があります。

口腔ケアは、どの程度したらよいですか?

起床時、毎食後および就寝前に行うのが理想で、生活のリズムを整える意味でも効果的と考えます。
朝・晩の洗面と口腔ケアはお年寄りの単調な生活に変化を与えるでしょう。気分転換を図ることは、QOLの向上に寄与するものと思われます。

一日に、最低限どれだけの口腔ケアをしなくてはいけませんか?

毎食後行うのが原則ですが、最低限就寝前には行うよう徹底するようにしましょう。

総括

口腔ケアは高齢者のQOLの向上や介護負担の軽減に有効です。