あとがき

今後の救急受け入れ体制について

4万人以上の救急患者さんを受け入れるためには各診療科は勿論、病院全体で支える体制が必要であることは論を持たない。

診療部、看護部、事務部、検査部、放射線部、薬剤部等全ての部署で、地域における当院の位置付け、当院における救急の位置付けを十分に理解し、把握しておく必要がある。
「救急専門医を導入すればよいではないか」という意見を耳にすることがあるが現実論とは言えない。
全ての患者の初期対応を数人の救急医で対応することが可能であろうか。勿論「否」である。日本の救急医の目指す研究領域は侵襲学および外傷学(Traumato1ogy)、critical care medicineであり、どちらかというと外科系重症患者の代謝および病態の解析と治療法の研究である。

一方で厚生省が卒後臨床研修で必須化を目指す救急医学は救急患者への初期対応能力(triage能力と専門医へのconsu1tation能力)の養成である。

すなわち救急患者に対するminimum requirementの獲得であり、欧米でいうdepartment of emergency medicineの研修である。研修医諸君が初期臨床研修を当院で希望する最大の理由として「1次から3次までの救急をすべて受け入れており充実した研修が期待できる」ことを挙げている。
しかし日本の救急専門医は救急外来でのtriage(emergency medicine)は救急医の仕事ではないと考えている。この考えは侵襲学、外傷学を専門とする立場からは当然のことである。

また、日本救急医学会評議員の多くは卒後臨床研修としての救急医学教育を3次救急を専門とする救命救急センターや救急医学講座に押し付けられるのはかなわないと考えている。そうであるならば、1次から3次までの救急を扱う施設こそが卒後臨床研修としての救急医学教育を担うにふさわしいと言える。

臨床医としての初期救急対応能力の獲得の重要性については議論の余地はないであろうし地域住民の二一ズも大きいので私はやはり地域中核病院に併設された救命救急センターは1次から3次までの救急を受げ入れ、卒後臨床研修でもその責任を果たすべきである、と考える。
当院での研修で日本救急医学会の認定医資格を取得することは困難ではないので若い諸君は是非とも学会員となって資格を取得し後輩の指導にあたって欲しい。すなわち、現在のように全科協力体制で救急外来を各診療科の初期救急の研修場所とし、全科当直を継続していくが望ましいと考える。

3次救急への対応について

問題は従来の診療科の枠組みで対応困難な重篤例への対応であるがこれは救急外来での1次から3次までの受け入れとは別の議論となる。

現在は麻酔科、集中治療部での対応をお願いしており多くは問題ないが、時に混乱が見受けられるので特に外科系診療科との調整が必要となろう。救急専門医導入の声もあるが診療領域が従来の外科系診療科と重複することもあり軋櫟を生む可能性が高く、実際に軋礫が派生した病院もある。このようなバックグラウンドを考慮に入れると3次救急の充実には各診療科のより一層の協力体制と麻酔科、集中治療部の拡充を図ることで対応したい。

おわりに

当院救命救急センターの受診動向をまとめて報告した。また救命救急センターの今後の方向については医療圏におけるニーズ、卒後臨床研修で果たすべき役割、病院活性化における役割等の面から意見を述べた。
救命救急センター長伊良部徳次
(掲載日:H9.7.16)